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安楽死
- 2021年07月20日
当院は「安楽死や殺処分」は飼い主さんが
強く希望されたときに限り実施しております。獣医師によっては「安楽死は絶対やらない!」という先生もいます。
しかし、ペットを飼育しているといろいろな事情が出てきます。
私も「命を薬剤で絶つ」というのはとても心苦しいですし、
できる限り避けて通りたいですが、いろんなやむを得ない事情も
あるでしょうし、飼主さんに強く希望され、
本当に後悔がないのなら、仕事として
お引き受けしているのが現状です。最近は動物愛護の精神が浸透していて、
かなり減ってはいるものの実施するしないも含め、
まだまだあとを絶ちません。以下に安楽死を希望される理由として代表的な例をまとめてみました。
<1> 飼主さんの深刻な事情などで今後の飼育が困難
<2> 重症で治療の見込みがないうえに、とても苦しがっている
<3> 高齢で介護状態になっていて面倒みれない
<4> その他の理由ちなみに当院では高齢動物を診る機会が多いので
<3>で相談されることが多いです。それぞれについて取り上げていきます。
<1> 飼主さんの深刻な事情などで、今後の飼育が困難
一昔前は、この事情で安楽死する例が
とても多かったと思いますが、現代は動物愛護の関係で
殺処分ゼロの時代ですので、こういったケースでの
安楽死は公共の施設(保健所や愛護センター)では
受けてもらえません。飼主さんの事情の例としては、
「飼主さんが亡くなってしまった、長期入院してしまった」
「飼主さんの体調不良で世話ができなくなった」
「住居の変更で飼えない環境になってしまった」・・・さまざまです。わたしもこのような相談を受けることはありますが、
これは動物が元気で目立った病気が無いことが多いので、
最も避けて通りたいパターンです!この場合、「安楽死」なんて聞こえの良い言い方をしていますが、
実際は「薬で命を奪う」ということですから
「殺処分」と呼ぶべきでしょう。最近はこのケースでの「安楽死(殺処分)」は
ほとんどなくなりました。飼えなくなっても別の方が
面倒みてくれてるんでしょう。
動物愛護の精神が深くなってきている証拠です。<2> 重症で治療の見込みがないうえに、とても苦しがっている
「ケイレンが全く止まらない」、「吐血が止まらない」、
「悪性腫瘍が破裂して出血し続けてる」、「痛がって叫び続けてる」など
本人もみてる側も辛いというものです。体力そのものが落ちてきて亡くなってしまうことも多いのですが、
本当に苦しそうでかわいそうになります。
代表例をあげますと、
ミニチュアダックスに稀に見られる「進行性脊髄軟化症」という病気は、
首から尾までの脊髄が全て駄目になってしまう病気で、
体が動かせないまま、最後は内臓や横隔膜も動かせなくなって、
呼吸できなくなるという病気で、常に激痛を発するため、泣き叫び続けます。
治療の手段もなく、痛み止めで抑えられるような痛みではありません。
獣医学書でも安楽死が勧められております。また、「炎症性乳癌」という病気は、乳癌のなかでも
最も悪性度の高い状態で、癌が炎症を起こすという感じで、
体のほとんどの栄養が癌に吸い取られ物凄い速度で発達し、
巨大化した癌がお腹の大部分を締め、
さらには全身に転移して呼吸困難などを起こします。このような病気のときは文字どうり「楽にしてあげる=安楽死」かもしれません。
本来ならこのような重たい病気での安楽死以外は、
「殺処分」という言葉を使わなくてはいけないかもしれません。<3> 介護状態になっていて面倒みれないというケース
介護状態になると人でも動物でも大変ですよね
人は安楽死制度は認められてないので、介護は避けては
通れないとは思いますが、ペットの世界では介護はお手上げ
という方がいるのが現実です。
特に大型犬の介護は大変みたいです!寝たきりでの床ずれや、夜鳴き、お漏らし
確かに、大変ですよね。それでも食欲はあるので大抵の飼主さんは
ぎりぎりまで頑張ってくれます。でも、なかには食欲があっても「生きてても歩けないのは可哀相」とか、
「床ずれが痛々しくて可哀相」などで、
食欲旺盛なのに安楽死を希望される方もいます。動物には自殺願望はありませんので、
食欲がある=生きたい気持ちで一杯
なのです!ちなみにペットは寝たきりの方が性格が穏やかになるし、
表情もやさしくなってかわいいもんです。
首を少し持ち上げて餌や水を与えるときなんか、
とっても健気でかわいいですよ~。床ずれだって工夫次第ではすぐ治るし、出来難くもできますし、
排泄だってペットシーツ敷き詰めれば簡単に処理できます。
体の汚れだって汚れをきれいにするフォームであっという間に
キレイにできますし、夜鳴きだって鎮静剤で6時間くらいなら
止まります。大変なのはわかりますが、やりがいもあるし、
今までたくさん癒しをくれた大切な家族でしょうから、
後悔の無いように最後まで面倒みてあげてほしいです。
それでも、どうしても介護の面倒がみられないというなら、
安楽死に応じますが、何度も言うようにくれぐれも
後悔だけはないようにお願いします。当院の常連の患者さんが
「どんなに苦しそうと思われても、私には生きたい生きたい!としか聞こえない」
とよく言います。まさしくその通りです。仕事なので希望されたらお受けしますが、ペットの気持ちを
可能な限り尊重してあげてほしいものです!!尚、これだけはお断りします。
安楽死より先に火葬の予約をして、安楽死を急かす方
先に火葬場予約はやめて下さい!
安楽死は急いでやるものでは、ありません!!いろいろな思いを回想しながら今までの癒しに
感謝の気持ちで見送ってあげるものだと思います。遺体はそんなに早くは腐敗しませんので、
せめてきちんと見送ってあげて下さい。
ここからは、安楽死の現状、2例をお伝えします。まず、1つ目
80歳近いおばあちゃんが飼っている大型犬以前から乳腺腫瘍があって、その痛みからか夜鳴きがおさまらない、
ということで、当院にて鎮静剤を処方してました。
飼主さんは治療は希望されてなかったので、薬のみの処方しかしてません。
なんだかんだで1年近く鎮静剤を使っていただきました。
何しろ、おばあちゃんには世話できなさそうな大きさの犬なので、
世話だけでも大変な労力でしょう。
この1年間で3回の「楽にしてほしい」の依頼がありました。1度目はもうグッタリしてるので、ということで伺ったら尻尾振って
私を出迎えてくれたので、安楽死は回避。2度目は、電話で「楽にしてほしいという予約話をしている」ときに
横になっていたが、犬が歩いて飼主さんの膝の上に乗ってきたので、
「もう少し頑張ります」とのことで回避。3度目はもう完全に横になって寝たきりになり、
食欲もなくなったので回避できず実施。1度目の希望から7ヶ月、ご自分の体調も厳しいなか
大変よく頑張ってくれたと思います。
飼主さんも後悔は無かったでしょう。2つ目の例は
他の病院で腎不全&糖尿病でずっとかかっていたが、
飼主さんも重度な病に見舞われており、そんな中、
頑張ってきたものの、周囲に「猫のことより自分を大事にしろ」と
責められ泣く泣く決意した例です。「かかりつけ」があるので、まずはそちらにお願いして、
駄目なら相談に応じます、と言いました。翌日・・・かかりつけに「いかなる理由があろうとも認められない」
と突き放されたということで実施。飼主さんは近日中に入院しなければいけないというのに、
何の解決策も導かずに「認められない」の一言で片付けてしまう。
かかりつけ医にかなりの苛立ちを感じた例でした。さて、以上の例を含めて安楽死の現状をまとめてみました。
安楽死の現状
かかりつけの先生にやってもらえない、管理センターもやらないために
誰も受けてくれず、山に捨てに行く人がいるそうです(呆)
人にはどうにもならない事情を抱えることがある訳ですから、
もう少し 柔軟な対応をしていただきたいです。
ほかに解決策があるなら良いですが・・・当院はそんな悩みを抱えている方に
少しでも柔軟に対応したいと思いますので、
怖がらずに遠慮なく相談して下さい。最後に当院が行う安楽死でこれだけは守っていただきたい
4つのことを書きます。1.安楽死は必ず飼主さんの自宅で行う
2.事前に火葬場を予約するなど、急かすような依頼はやめて下さい
火葬の話は生きてるうちにするものではありません!
きちんと看取ってから予約するようお願いします。3.安楽死処置は必ず飼主さんに付き添っていただくよう勤めています。
どんなに辛くても、それなりのことをする訳ですから、
しっかり看取ってあげて下さい!4.かかりつけ医があるときは、どんなに言い難い先生だとしても、
まずはそちらに相談してください。以上のことだけは厳守でお願いします。
ちなみに費用ですが、通常の価格では他の病院でやってないこともあり、
希望者があとを絶たないため、敷居を高くしなけらばならない事情から
10万円(税込)で行っております。
10万円のうち8万円は動物愛護ボランティアに寄付しております。訪問アニマルクリニック浜口